2005年10月24日

コンクリート住宅の住人は早死にするか? その1 「構造いろいろ」

 「コンクリート住宅は9年早死にする」船瀬 俊介 (著)

 センセーショナルな書名です。
 静岡大農学部のマウス実験結果を根拠に、コンクリート住宅に住んでいると9年早死にすると主張しています。

 この主張の当否について論じる前に、まずそもそも建築物にはどのような構造があるのか、その内のどれが共同住宅に適しているかについて書いてみたいと思います。


 建物の構造としては、その構造体の素材によって大きく3つに分けられます。
 木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造です。


木造のメリット 
 安価であること(RCの半額程度)
 躯体が軽量なため基礎工事が簡易で済み工期が短いこと

 しかし、戸建住宅なら好みの問題もあるでしょうが、賃貸住宅においては、隣家・階下との間での遮音性能を重視すべきです。
 騒音のクレームが尽きず、既存の物件でも上階の音を録音し、訴訟を提起する旨を主張している入居者もおりますので。

 この点、木造であっても床にクッションフロアなどのやわらかい材質のものをひけば高い音は有る程度防ぐことが出来ます。
 しかし、重い音(重量の重いものを落下させたときに発生する音)は、床自体に質量がない限り振動を吸収し切れないので、木造では防ぐことは出来ません。
 しかも、隣家との境界壁もいわゆるプラスターボードなので、いくら吸音材を壁内に敷設したとしてもその効果に限界があります。

 火災にも弱く、火災保険料も馬鹿にならない上、シロアリ対策も必要となります。


 次に、鉄骨造は鉄骨の厚みによって軽量鉄骨と重量鉄骨に区分されます。
 軽量鉄骨造、いわゆるプレハブ鉄骨の構造物を採った場合もコスト面は優れていますが、遮音性の面で不安が残ります。


 ただ、木造・軽量鉄骨造は一般的に建物の耐用年数が短いため、減価償却の期間も短く短期で投資を回収し、20年〜30年後に建物を解体し、敷地を長期間拘束しない、という点で優れています。


 そして、重量鉄骨造とは軽量鉄骨造よりも厚みのある鉄骨を使った構造体をいいます。
 重量鉄骨造は木造・軽量鉄骨造よりも1割ほど割高ではあるものの、耐久性に優れ、2階以上の床にもコンクリートを流すため防音機能に期待が出来ます。
 しかし、鉄骨は熱を伝えやすいため結露から逃れることが出来ないうえ、耐久性・防音の面からは鉄筋コンクリート造の建造物に一歩譲らざるを得ません。

 

 そこで、私はマンションの構造体に鉄筋コンクリート造(RC)を選択しました。
 もちろん、鉄筋コンクリート造となれば長期間土地を拘束することになるのでリスクは高い上、木造・軽量と比べ2倍のコストがかかります。
 しかし、遮音性と耐久性の高さから、共同住宅にはRCが最も適していると考えました。
 そして、アパート経営のうまみは借金返済後になること(マンション建築資金は25〜35年で返済するのが通常)等から、50年以上の耐久性を有する鉄筋コンクリート造が優れていると考えました。


 しかし、冒頭にご紹介した書籍は、「コンクリート住宅の住人は9年早死にする」と主張しています。
 これは本当なのでしょうか?
 明日からじっくりと検証したいと思います。 



【豆知識】
 募集広告にて、木造と軽量鉄骨造は「アパート」または「コーポ」と表記されます。
 これに対して、RCや重量鉄骨造は「マンション」と記載されます。

2005年10月25日

コンクリ住人は早死? その2 「コンクリートの恐怖」

 「静岡大学と東京大学の農学部が合同で、「コンクリート」「金属」「木」の3種類の巣箱を使い、ネズミの赤ちゃんの生存率を調べた。
 するとコンクリ巣箱ではバタバタと93%が死んでしまい、生存率はわずか7%だったのだ。金属巣箱が41%、木製巣箱が85%。もちろん湿度、温度、シキワラ、餌は同じで、違うのは巣箱の素材だけなのに、コンクリと木製では生存率に12倍以上の開きが出た。
 では、なぜコンクリート建材が心身に悪影響を与えるのか?
 一言でいえば“冷ストレス”による。つまり体熱を奪うのだ。コンクリート建築に入るとゾクッとするのは「冷輻射」作用によるもの。これは遠赤外線とは逆作用だ。 」

(「第8回 なぜ、木造建築を見直すべきか 〜科学が解き明かした木材の「癒し」効果〜 9年も早死にする団地・マンション族1?」  船瀬俊介)
  http://nikkeibp.jp/sj2005/column/d/08/ 


木造住宅メーカー最大手の住友林業のページにも、同様のことが書いてあります。

「木製、金属製、コンクリート製の飼育箱で、生まれたばかりのマウスの生存率と成長率を比較した実験があります。木製では生存率が85%でしたが、金属製は41%、コンクリート製ではわずか7%。さらに発育面でも木製では順調で、金属製、コンクリート製ではかなり劣っていたという結果が認められています。」
 http://sfc.co.jp/tech/super/03.html


 エライこってす。
 逃げてー!RCの建物に住んでいる人、今すぐ逃げてー!

 って、待て待て、本当ですか?
 そんなに単純なものなんでしょうか?

 私の実家は、築50年を超える在来木造住宅。
 祖父、父ともに早死にしています。
 さらに伯母が二人、幼少の頃になくなっています。

 これに対して、妻の実家は鉄筋コンクリート。
 祖父母ともに80を越えましたが壮健です。


 そこで、これらの主張のもととなっている静岡大学の論文に当たってみました。

 その内容については、また明日・・・
 予告「恐怖のマウス実験」
 

2005年10月26日

コンクリ住人は早死に? その3 「恐怖の実験」

 今宵は、件のマウス実験の論文を要約してご紹介します。


 有馬孝礼  :静岡大学農学部研究報告 No.36,P51(1986)
 http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/academy/35-1209.pdf

「マウスをそれぞれ材質に異なるケージ(箱)に入れる。
 箱の材質はそれぞれ、ヒノキ、鉄筋コンクリート、亜鉛鉄板。
 子ネズミの生存率が木製では85%なのに対し、金属製は41%、コンクリ製は6.9%と著しく低かった。」


 ここだけ読むと、
 『恐怖!コンクリ住宅〜アスベストの次はコンクリだ!』」という書名の本が書きたくなりますね。
 しかし、この論文を読み進めていくと…
 
「生存率の顕著な差は、材質による熱の奪われ方の差が最も大きいと考えられる。
 一般に出生直後は体温調整機能が未熟である。
 被毛がなく、体重あたりの体表面積が大きく、さらに体表面と床面を絶えず接触している子ネズミは、床面からの伝達による熱損失が大きいものだと考えられる。

 本実験の結果はケージ内の動物体との接触による直接的な熱伝導または温度差が動物の生理反応に大きな影響をもたらすことを明確に示すものである。」


 つまり、毛も生えていない子ネズミさん達は、床にお腹を引っ付けて生活しているため、金属性・コンクリ製の床材だと体温を奪われ早死にする、ということです。

 人間様が、冷たい床に布団も敷かずにそのまま這いずっているなら、コンクリ住宅では早死にするでしょう。
 しかし、違うでしょ。

 ハツカネズミは四つんばいで体が地に着いているが、人間は二足歩行する。
 ハツカネズミは裸だが、人間は寒けりゃ服を着るし寝るときには布団にもぐる。

 (『脇見運転』suikanさんより引用)


 にもかかわらず、この論文は次のように締めくくります。

「木製ケージは動物の居住環境としては、金属・コンクリ製より明らかに優れていることを示した。」

 それを一足飛びに「コンクリ住宅だと早死にする!」と煽り、いかにも「コンクリからは有害物質が染み出てきている」ような印象を与えるような操作をしているように思えます。
 陰謀の匂いがします。

 さらに論文を読み進めると、陰謀の黒幕がわかります。

 
「謝辞
 本研究は静岡県材木協同組合連合会の補助金によって行った。謝意を表する。」

 最初から結論ありきの実験でしたー!
 なお、このブログも、「コンクリ住宅は危なくない!」という結論ありきで書かれてます。

 明日は、「コンクリ住宅の入居者は平均寿命が短い!」という島根大学の研究結果についてケチをつけちゃいます。

 それではー

2005年10月27日

コンクリ注意 その4 「島根大学の調査」

 今宵も、船瀬氏の文章からスタートです。

 『9年も早死にする団地・マンション族?』http://nikkeibp.jp/sj2005/column/d/08/
 「島根大学総合理工学部の中尾哲也教授がまとめた論文は、衝撃的だった。
 団地やマンションなどコンクリート集合住宅に住む人と、木造に暮らす人の平均死亡年齢を比較すると、団地・マンション族のほうが、約9年も早死にしていたのだ(調査件数:木造270件・コンクリート集合住宅62件)。「この数字は非常に大きい!」と中尾教授も驚愕した。さらに全国調査でも「木造率が高いほど平均寿命が高い」ことが立証された。 」


 この結果に「驚愕」し、木造住宅の方が平均寿命が高いことが「立証された」そうです。
 このサンプル数で(笑)。

 私の好きな「トリビアの泉」に出てくる統計学の先生はいつも「2,000のサンプルがあれば、信頼の置ける数字が出ます」と仰っています。
 それに対して、この調査で採取されたサンプルは、木造270、RC62。
 しかも、木造は戸建なのに対して、RCは集合住宅。
 
 
 そして、研究発表は、【日本材木学会】で発表されたもの。
 最初から、結論ありき、の調査だったのでしょう。

 明日は、「まとめ」 

2005年10月28日

コンクリ住宅の脅威 その5 「結語」

 このシリーズで何を言いたかったのかというと、

「木造か、RCかは、結局は建てる人の好み。
 建材としてはどれも一長一短がある(コスト、耐久性等)。
 それを如何にも科学的なデータを挙げて、扇動するな!」ということです。


 「無垢の木材の匂いをかぐと落ち着く」という人もいるし、
 「地震国日本ではRCの重厚さに安心する」という人もいるでしょう。

 私は無類のコンクリートジャングル好きです(誇大表現)。


 それを片面的に「コンクリート・ストレス」という意味があってないような言葉で人心を惑わすのは許しがたいことだと思います。


 船瀬氏は、「なぜコンクリート建材が心身に悪影響を与えるのか?」について、こう理由付けています。

 「一言でいえば“冷ストレス”による。つまり体熱を奪うのだ。コンクリート建築に入るとゾクッとするのは「冷輻射」(※)作用によるもの。これは遠赤外線とは逆作用だ。

(※)気温が下がって壁や窓などの表面温度が低くなり、人体の熱がそれらに奪われる現象。壁や窓から離れていても起こる。」



 彼の言うコンクリートストレスの核心は、「輻射熱」にあるようです。
 ならば、外断熱であれば、RCでも全然OKじゃないですか!
 

 よくよく調べて見ると、船瀬氏は次のような書籍も書かれています。 

 『気象大異変―人類破滅へのカウントダウン』 船瀬 俊介

 なんだ・・MMRか キバヤシでしたか。


 このような刹那的な書籍を多く書かれている方の文章を精査せずに掲載している日経BPに抗議します!(小さい声で)

 ちなみに船瀬氏はこの連載の第6回、7回で、外断熱を褒め称えています。
 キバヤシに褒められるのも、少々複雑です…


 明日は、「グリシーヌ2の秘密」

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